コラム 「CADベンダーのAI放浪記」

2026/01/30

非営利活動法人 設備システム研究会

ベンダーのK


みなさま、新年おめでとうございます。ベンダーのKです。
早いもので2026年も1カ月が経ってしまいました。お雑煮を食べてゴロゴロしていたのが昨日のことのようですが・・・。今年は冬季五輪やWBC、夏にはサッカーW杯と大きなイベントが目白押しですね。また、GWと秋のシルバーウィークは大型連休が出現する貴重な年とのことですので、個人的にも、仕事もプライベートも楽しく充実させよう!と決意を新たにしています。

さて、今回のコラムでは『CADにおけるAI』についてベンダー目線から語ってみたいと思います。

いまやAIはその言葉を聞かない日がないほど身近な存在になりました。ニュースや新聞ではさまざまな業界でのAI関連の記事や事例を目にします。当然ながらCAD界隈でもお客様の関心は高く、弊社に対しても『AIで図面が描けるようにしてよ!』との声は何年も前から数多く寄せられています。
実は、弊社製品には一つだけAI機能が搭載されています。もう数年前のバージョンでかつ電気設備ではありますが、PDFやDWGでプロットされている盤やコンセント、照明器具や自火報などの図形をAIで絵柄認識させCADの専用部品に置換する、という機能です。

  

この機能の開発にあたっては某ユーザー様に多大な支援をいただきましたが、それはそれは苦難の連続でした。まず『学習図面どうする?』という初手の課題です。当時のAI学習では教師データが必要でしたが、学習図面として最適な正しい設計図や施工図が手に入りません。それは至極当然で、お客様からしたら実物件の図面は社外に出せません。『うーんどうしようか?』『どうしましょうね』などとアレコレ検討を重ねつつ、なんとか特殊な方法で学習図面(のエキス)を入手する目途が立ちました。
ヨシこれでやっと!と喜んだのも束の間、こんどは枚数問題の勃発です。AIの精度向上には学習データの『良質さ』と同時に『量の多さ』も欠かせませんが、ご協力いただいているユーザー様に過度な負担はお願いできません。図面作成が本業ではない弊社が用意できる図面枚数には限度があるなかで、一定量を確保しないとディープラーニングまで進められないよなぁ〜と皆でウンウン唸りながら出した答えは、、、『人力(じんりき)』でした。AIで学習図面から類似図面を複製することも試したものの、思うような結果が得られずで。最先端の機能を作るのに手作業なの!?というモヤモヤを抱きつつ、背に腹は代えられません。担当者で手分けして作業しました。学習図面内の置換させたいシンボル(汎用図形)を分解して、大きさを変えたり配置確度を変えたり距離を離したり線分を足したり引いたり、と1枚の学習図面からたくさんの疑似図面を作りました。
この単純に思える作業は意外と微妙な塩梅(サジ加減?)が必要で、『人間らしさ全開』の営みとなりました。こうして来る日も来る日も親図面から子図面を作り孫図面を作り・・・と、他にも課題難問はありましたが、どうにかこうにかリリースに漕ぎつけました。

満を持してリリースしたAIの新機能、果たしてお客様の反応は、、、残念ながらとても褒められたものではありませんでした。お客様の感想をひと言でいうと『変換率(認識率)が低くチェックが必要になる』というものです。当時、一般的なAIの正誤率は80%前後が合格の目安とされており、弊社機能もそのラインは概ねクリアしていましたが、お客様の反応は『100%信頼できないなら最初からCAD機能で部品を配置した方が正確だし早いよね・・・』というものでした。
うーん、もうガッカリ、でもそう言われてしまうと確かにおっしゃる通りですね、、、と白旗は揚げつつ、それでも『正誤率が100%にならずとも許されるAIに適した機能があるはずだ』と新たなネタを探して彷徨う日々が始まりました。

いまもまだ道半ばではありますが、AIの進化が目覚ましいこともあり、ぼんやりと果実の種が見えてきた感じです。100%の正確性が求められるCADとAIは一見すると食い合わせが悪そうですが、うまくブレンドできれば未知の味わいを作り出せるのではないかと思っています。
最近では閉じた環境内でも構築でき、かつ自律学習型のAIモデルがパッケージ化されたことで、各企業は自社の情報を社外に出すことなくAIを利用し精度を向上させることが可能になりました。また、得意分野に特化したAIがライブラリー化され、あたかもスーパーで商品を選ぶように欲しいAIモデルをチョイスして組み合わせることもできるそうです。
ChatGPTが大学入試の共通テストで満点を連発したというニュースにはある種の怖さも感じますが、どんどん賢くなるAIと上手に付き合っていきたいと思います。