コラム「自動化のすすめ」

2021/08/31
非営利活動法人 設備システム研究会
向来


建設業界での自動化といえば、設計や施工のフェーズでさまざまな自動化の取り組みが進められているが、ここでは、自分の身の周りの業務における些細な自動化について事例を紹介したい。
私の所属する部署では、基幹系のシステムからデータを抽出して、Excelで帳票を作成し、内容を分析する業務がある。以前は、必要に応じて手作業で作成していたが、あまりにも機械的な作業なので、手間をかけずに作成できるように改善を進めてきた。
まず始めは、作業の手数を減らすために、ExcelのVBAでプログラムを作成し、次に、処理を順次実行するためのスクリプトを記述し、さらに、私が不在でも実行できるようにタスクスケジューラから起動するようにした。その結果、現在では、自動で処理できるようになっている。
常時電源オンの私のサブPCは、毎朝7時45分になると、タスクスケジューラからスクリプトを起動する。そして、基幹系システムからデータを抽出するなどして、19個のExcelのファイルを作成し、業務の始まる8時30分頃に停止する(図1) 。
図1 毎朝自動作成されるファイル
作成されたファイルのタイムスタンプの間隔を見れば、それが人間業ではないことは一目でわかる。
この自動化により、単純で機械的な作業をする必要がなくなり、その時間を他の業務に注力することができ、業務の効率化に十分効果があったと思う。
また、この自動化では、Windowsの機能であるタスクスケジューラ(注1)やWindowsScriptHost(注2)、そしてExcelに搭載されているVBAによって実現できている。特別なソフトは何も使用していない。もちろん、ロボティック・プロセス・オートメーション(注3)などを使えば、もっといろいろできるだろうが、特別なコストなしで、どのPCでも利用できる点も素晴らしい。
他にも、いろいろな「自動化」をしているが、その中からもう一つ紹介する。
最近、働き方改革の影響により、PCの稼働時間を計測されている。その関係で、PCログイン後にポップアップウインドウが開き、IDとパスワードの入力が求められる。これを入力しないと仕事できないようにウインドウが画面に居座り続ける。 こんな場合にも、スクリプトで自動入力することができる。PCにログインしたら、スクリプトを起動するようにしておき、特定のウインドウを見つけたらIDとパスワードを勝手に入力するように記述するだけだ(図2)。
図2 IDとパスワードの入力
パスワードを自動で入力するとは何事かと、お叱りの声も聞こえてきそうだが、Windowsにちゃんとログインした後なので、まぁ大丈夫としましょう。
こんな些細な自動化が業務効率化だとは言いにくいが、身近なソフトウェアに付属しているプログラミング言語を活用するだけで、日々の単純な繰り返し作業を省力化することは可能だ。自身にも思い当たる作業があるという方、また、プログラミングに興味を持った方は、一度をチャレンジしてみてはどうでしょうか。


注1 タスクスケジューラ
Microsoft Windowsのタスクスケジューラは決められた時間または一定間隔でプログラムやスクリプトを実行する機能である。(出典:Wikipedia)
注2 Windows Script Host(ウインドウズ・スクリプト・ホスト)
Windows Script Hostとは、Microsoft Windowsにおいてテキストファイルに記述したスクリプトを実行するスクリプト実行環境である。WSHと略される。かつてはWindows Scripting Hostと称した。(出典:Wikipedia)
注3 ロボティック・プロセス・オートメーション(英語: robotic process automation、RPA)
ソフトウェアロボットまたは仮想知的労働者と呼ばれる概念に基づく、事業プロセス自動化技術の一種である。(出典:Wikipedia)