コラム「ギャップ」
2020/11/30
非営利活動法人 設備システム研究会
三木秀樹
件{くだん}の研究所のセンセイに誘われて、アメリカに5回行った。2012年にフロリダ州オーランド、2013年にミズーリ州カンザスシティ、2014年にカリフォルニア州サンディエゴ、2015年にロードアイランド州プロビデンス、2016年にテキサス州グレープバイン。どこがどこだか分かるかな?
目的は、ABSA(American Biological Safety Association: 米国バイオセーフティ学会)の年次大会に参加するためだ。バイオセーフティ(バイオハザード対策)の分野はアメリカが最先端なのだ。
アメリカに行けるのはウレシイが、ハードルが高いんだよなぁ。「ホンネは観光だろ#」とゆー社内の攻撃をしのがなきゃいけないし、日程をヤリクリしないといけないし、飛行機や宿泊先を段取りしないといけないし、そして極め付きは、英会話地獄が待っているし。
英語の文書ならある程度は読んだり書いたりできるけど、会話は聞くのも話すのも難しい。なので、できるだけ会話をせずに済ませたいけど、センセイは「セミナーも受講しなさい」って言うし。でも、日本のセミナーと違って、講師は生徒に「発言しろ、参加しろ」って言うし、しかもグループ討議も実習もあるし、さらにセミナーって半日もしくは丸一日も続くし。社内の誰も、こんな修行をしているなんて知らずに、「いーよなー、アメリカ観光できて」って思っているんだよなぁ。「違うんだよ#、オマエもやってみろよ、このーっ#」。
セミナーは基本的に医療従事者向けだが、中には「BSL-3施設の設計・コミッショニング」とか「BSL-3施設の運用」とか設備屋にも参考になるものがある。
2015年に受講した時、「どうだ、BIMって分かりやすいだろ」らしき説明(よく聞こえないから想像)があって、ちょっと驚いた。いや、もちろんBIMは知っていたけど、医療従事者向けのセミナーに出てくるなんて。日本では、当時は、あるいは今でも建設業界向けばかりだもんなぁ。アメリカって、やることが早いよなぁ。バイオセーフティだけでなく、BIMもアメリカが最先端だったのだ。ちょっと悔しかったなぁ。
写真 ABSAセミナーでのBIMの説明(2015年10月)
かと思うと、何でも最先端ってわけでもない。セミナーの実習で使うスケールやダクトメジャーはインチ系のまま、って何。アメリカは、ギャップが大きいとゆーか、大らかとゆーか。
写真 インチ系のスケールとダクトメジャー(2012年10月)
ABSAにはアメリカだけでなくヨーロッパ、アフリカ、アジアなど世界中から人が来る。なので、いろいろな人の英語が聞くとはなしに聞こえる。すると、いろいろな英語があることが分かる。例えば、日本語でも北から南までいろいろな方言があり、また外国人が話す日本語もあるように。つまり、英語もギャップが大きいとゆーか、大らかとゆーか。と思ったら、ふと閃いた。そうだ、日本人なら、方言だって、外国人が話す日本語だって、それなりに聞き取れるじゃん。だったら、自分が英語を話すときに、発音なんてあまり気にしなくても、相手はそれなりに聞き取ってくれるんじゃないかな、と。
以来、英語を話すときに、発音は気にしなくなった。さらに、定冠詞も三単現も現在・過去・未来も気にしなくなった。要すれば、今までに受けた英語教育(呪縛)のガラガラポンだ。代わりに気にするのは、最初は恥ずかしいけど、相手に聞こえるように、大きな声で話すことだ。そして、相手が話すことを自分が聞くよりも、自分が話すことを相手に聞いてもらうようにすることだ。そして、相手が話すことが分からない時は、何度でも「Sorry」と聞き返すことだ。三度聞き返すと、「ははぁ、コイツ英語が苦手なんだな」と察して、分かるように話してくれる。
日本に居ても、英会話の機会は増えている。建設業界でも外国人の技能実習生は増えているし、外国にCADやBIMの入力を発注することも増えているし、日本で開催される国際会議に行けと言われることもあるし。なので、設備屋の皆様も、あらゆる手立てを講じて英会話地獄を乗り越えて下さい。例えば、フツーの会話なら、最近賢くなった自動翻訳も使えるかも。さらに、もし施工上の込み入った会話なら、当会が発行しているマニュアルとその英語対訳も使えるかも。って、露骨な宣伝。