コラム「虫メガネぐらいじゃ」

2020/10/31
非営利活動法人 設備システム研究会
三木秀樹


新型コロナ(Covid-19)騒ぎで、マスクが一躍注目された。マスクには、「マスク美人」を作る効果もあるが、粒子(塵埃)を取る効果もある。あれ?、何かヘンかな。
写真 マスク(2020年6月)
でも、マスクのフィルターや空調用のフィルターって、1mmほどの厚さしかない。なのに、粒子を90%カットとか95%カットとか、さらには99.97%カットとか99.999・・%カットとかできるんだよなぁ。不思議だなぁ。
ザルだと、網の目より大きいものは通さない。それはさすがにピンと来る。でも、マスクのフィルターや空調用のフィルターはザルとは違う。繊維のジャングルみたいなものだ。もちろん、ジャングルの隙間より大きいものは通さないが、それより小さくても繊維にぶつかると、絡めとる。でも、粒子って隙間よりずいぶん小さいし、しかもフィルターって薄い。なのに、上手く絡めとるんだよなぁ。不思議だなぁ。
もちろん、ちゃんとした理論的裏付けがあるわけだ。例えば、粒子がごく小さいときは、ブラウン運動でジグザグに動くからとか何とか。でも、全くピンと来ないで10年ぐらいモヤっとしていたら、ふと閃いた。そうだ、1mmほどのフィルターって薄く感じるけど、粒子から見たらそれなりの長さなんじゃないかな、と。
粒子の大きさもピンキリだけど、例えばHEPAフィルターの試験に使われる粒子の直径は0.3ミクロン(0.3/1000mm)。対して、フィルターの厚さは1mm。粒子の大きさを人のスケール、例えば人のアタマの直径、0.3mにしてみると、フィルターの厚さは、1mm×(0.3m÷0.3ミクロン)=1kmに相当する。うひゃあ。
長さ1kmのジャングルを、スルっと通り抜けるのはさすがにムリだよなぁ。とゆーことで、薄いフィルターでも粒子を絡めとれると、やっとピンと来たのだった。
ところで、HEPAフィルターなどの超高性能フィルターの用途の一つは、LSI(大規模集積回路)の製造だ。最新の線巾(回路プロセス)は約10ナノメートル、つまり0.01ミクロンだ。線巾が細くなればなるほど、一定の面積の中の配線の数は増える。10ナノメートルともなれば、たとえ1cm×1cmの面積でも配線の数はおそらく膨大だ。しかも、基板は複層、つまり3次元だ。
でも、膨大なのは何となく分かるが、どれぐらい膨大なのかは、やはりピンと来ない。なので、線巾を人のスケールにしてみると、1cmは(10mm×(0.3m÷0.01ミクロン))=300kmに相当する。うひゃあ。ピンと来たぁ。
出展: GoogleMap
図 300km圏
そして、そのLSIの膨大な配線の経路は、何と計算で作られているらしい。そう、じつはそれが言いたくて、長々と前置きを書いたのだ。そうすると、いくらデカい建物でも、その空調・衛生・電気・通信のダクト・配管・配線の経路を全部まとめて計算で作るなんて、大したことはないと思えてくるでしょ。
え?思えない?ピンと来ない?うーむ、前置きがこれでも足りないか。


オマケ
「塵埃」は、「塵」と「埃」がくっついた言葉だけど、両者は数字の桁を表す単位(接頭辞)でもある。
分、厘、毛、糸、忽、微、繊、沙、塵、埃、・・なので、「塵」は10-9、「埃」は10-10
なので、1塵メートルは1ナノメートル、1埃メートルは0.1ナノメートル。って、「どれだけ小さいんだよ、このーっ#」。