コラム「謙虚な人を育てる方法」
2020/10/15
非営利活動法人 設備システム研究会
三木秀樹
小学生にプログラム教育をすることになったとか。そういう時代だよなぁ。それはいいけど、電卓が使える時代なのに、なぜ九九を暗記させるのかな。キーボードで文字を入力してプリンターで印刷する時代なのに、なぜ漢字の書き順を暗記させるのかな。スマホで何でも調べられる時代なのに、なぜ持ち込みを制限するのかな。文科省さんのロジックって、不思議だなぁ。
ちなみに、私にとっての最初で最後のプログラム教育は、「機械計算法」なる格調高い名前の授業だった。成績は「優」・・じゃなくて「良」。なのに、以来長々とプログラムを作り続けているのは、「下手の横好き」ってことかな。本職じゃないから、立派なプログラムを作ってきたわけじゃないけど、例を挙げると、
表 私が作ったプログラム
| 年 |
状況 |
作ったプログラム |
ハードウェア |
言語 |
| 1979 |
学校を卒業するためのネタを作っていた |
HASP[注1]を利用した住宅の自然通風の省エネ効果の計算 |
大型計算機(NEAC)のTSS[注2]端末 |
日本語FORTRAN77 |
| 1983 |
現場で汗(冷や汗を含む)をかいていた |
ネジ込み配管の切断長の計算 |
ポケコン(SHARP PC-1255) |
付属のBASIC |
| 1986- |
異動先の職場にパソコンがあった |
多元連立1次方程式の計算、平均輻射温度の計算などなど |
パソコン(PC9801系) |
DOS版N88-日本語BASIC |
| 1986- |
職場にXYプロッターが来た |
湿り空気状態値の計算と線図の描画 |
パソコン(PC9801系)、プロッター(RolandDG DXY-100) |
DOS版N88-日本語BASIC |
| 1988-1989 |
BSL-3実験室を作った |
空調機器類の発停・連動制御 |
PLC[注3](MELSEC-F) |
Ladder[注4] |
| 1991- |
空衛設備CADを開発・維持するようになった |
配管・ダクト・機器の2次元・3次元描画、ラスターデータの読込、ウォークスルーなどなど |
パソコン(FM-R、FM-V、自作) |
AutoCAD付属のAutoLISP |
| 1992 |
配管加工場から頼まれた |
配管自動倉庫の在庫管理 |
パソコン(PC9801系)、PLC(MELSEC-F) |
DOS版N88-日本語BASIC |
| 1993- |
BSL-3実験室の遠方監視を始めた |
記録計データの収集・加工・送信 |
パソコン(PC9801系) |
DOS版N88-日本語BASIC |
| 1998- |
社外・社内HPの立ち上げに参加した |
空調・衛生の各種計算、文書管理などなど |
サーバー(HP) |
HTML、XML、VBScript、SQL |
| 2002- |
温湿度監視をカッコ良くやりたくなった |
温湿度データの収集・表示 |
パソコン(DELL)、LonWorks |
LonMaker |
| 2005- |
バーチャルな鉄道模型を作りたくなった |
3次元モデルの作成・移動・回転 |
パソコン(Acer、Gateway) |
HTML、VRML、JavaScript |
| 2006- |
IFCデータを作りたくなった |
IFCデータの作成・変換 |
パソコン(NEC、DELL) |
ExcelVBA、IFCsvr[注5] |
| 2013-2015 |
施工図作成の自動化を提案した |
配管・ダクト経路の計算 |
パソコン(DELL) |
ExcelVBA |
| 2019 |
自宅でも自動制御をしてみたくなった |
換気扇の発停制御 |
パソコン(HP)、Arduino Uno |
Arduino IDE |
| 2020 |
プログラムを忘れないように |
ポリオミノパズルの計算 |
パソコン(HP) |
ExcelVBA |
| 2020 |
マゴに自慢するために |
湿り空気状態値の計算(移植) |
パソコン(HP)、スマホ(富士通) |
Android Studio、Kotlin |
[注1]HASP: Heating, Air-conditioning, and Sanitary engineering Program/ 動的空調熱負荷計算プログラム
[注2]TSS: Time Sharing System/ 1台のコンピュータを複数のユーザが同時に利用するための仕組み
[注3]PLC: Programable Logic Controller/ 制御用コンピュータ
[注4]Ladder: 自動制御図を記述するための言語
[注5]IFCsvr: IFCファイルを扱うためのライブラリ
さらに、ここには書けないようなアヤシイものやツマラナイものもいろいろ作った。どちらかと言うと、そっちの方が楽しかったかもなぁ。画面のプログラムを周りの人から覗き見られても、中味までは分からないから、平気さぁ。でも、さすがに情報システム部からは、歩くセキュリティホールとか言われたりしていたけど。
ところで、プログラムを作ると、一度で思い通りに動くことはまずない。動かない原因は、作ったプログラムに間違いがあるからだ。すると、動くようになるまで、自分の間違いと向き合わなきゃならない。すると、自分は間違ってばかりだと嫌でも自覚しなきゃならない。すると、多少は謙虚な人になれる。
図 私の好きなメッセージ(ウソ)
プログラム教育の目的は、まさにそこにあって欲しいものだ。「自分は間違わない」なんて言っている人は、一度プログラム教育を受けてみたら?