コラム「アイダホフライドチキンじゃないし」
2020/8/31
非営利活動法人 設備システム研究会
三木秀樹
「BIMのデータ交換が上手くいかない」という話を聞くことがある。それに続けて聞くのは「IFCの互換性が悪い」という話だ。
長々とIFCの仕様作りに関わってきた私としては、もちろん「申し訳ないです」と謝らなきゃいけないけど、「限界があるんだよなぁ」と思ったりもする。
IFCはBuildingSMART(旧IAI)が作っているBIMデータの定義だ。本来、全てのCADがIFCを厳密に使えば、互換性は100%だ。でも、実際にはそうならない。なぜなら、IFCに定義がない、あるいは定義が厳密でない(異なる解釈ができる)ものがあるからだ。
例えば、壁ならIfcWall、屋根ならIfcRoofといった定義はあるが、庇{ひさし}には定義がない。なので、庇を表現する場合、CADによってIfcWallを使ったりIfcRoofを使ったりすることになって、見た目は同じでも属性が異なることになって、互換性がアヤシクなる。
「言い訳してんじゃねーよ#」と叱られそうだが、そもそも人がすることに完全はない。でも、人には完全ではないところを補う知恵がある。例えば、CADのベンダーやユーザーが談合して、庇はIfcWallで作りましょうぜ、へっへっへ、と合意すればいいわけだ。ちなみに、これは、いい談合。悪い談合もあるけどネ。
なので、互換性で困っているアナタ、ぜひ、buildingSMARTに行って、あるいはbuildingSMARTに行っている人を捕まえて、「これはこう談合したほうがいーんじゃねーの#」とガツンと言ってあげましょう。
出典: building SMART JapanのHP
図 building SMART Japan
ところで、IFCは互換性で語られることが多いけど、IFCの真の値打ちは複雑至極な建物をデータで表現できるところにあると思う。なぜなら、データで表現できれば、プログラムで計算してデータを作ることができるからだ。つまり、人の介在をなくす、もしくは極限まで減らすための基盤なのだ。そういえば、IFCのFはFoundationだったなぁ。
IFCがあるからこそ、「CADなんだから、ボタン一つで図面を書いてくれりゃいーのに」ってのも、何となくできそうな気になってくるんだな。
図 計算で作った建物モデル